岐阜地方裁判所 昭和55年(わ)67号 判決 1980年4月16日
本籍
岐阜市早田町四丁目一番地
住居
右同
青物卸売業
松原新市
昭和一一年三月三〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は審理を遂げ次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役五月及び罰金六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
但し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、岐阜市茜部新所一丁目一二九番地において、青物卸売業「島豊青果」を営んでいる者であるが、岐阜市千石町一丁目四番地所在の岐阜北税務署において、同税務署長に対し、違法であることを認識の上、あえて、売上げの一部を除外し、所得金額を秘匿し、虚偽過少の所得税確定申告書を提出する不正の行為により、左記のとおり所得税を免れたものである。
<省略>
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の
1 当公判廷における供述
2 検察官に対する供述調書(二通)
一 岐阜県北税務署長大蔵事務官作成の証明書(検察官請求証拠等関係カード番号17のもの、以下同じ)
判示1の事実につき
一 右証明書(11、12)
判示2の事実につき
一 右証明書(13、14)
判示3の事実につき
一 右証明書(15、16)
(法令の適用)
一 該当法令
三回に及ぶ所得税の脱税、所得税法二三八条(いずれも三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金又はこれを併科)
二 選択刑
右懲役刑と罰金刑の併科
三 併合罪加重(四年六月以下の懲役と千五百万円以下の罰金)
刑法四五条前段、四七条本文、四八条二項、一〇条
(懲役刑については犯情の最も重い判示3の罪の刑に法定の加重、罰金刑については、所定の罰金額を合算)
四 宣告刑
懲役五月及び罰金六〇〇万円
五 労役場留置(金二万円を一日に換算)
刑法一八条
六 懲役刑の執行猶予(三年間)
刑法二五条一項
(情状)
被告人の脱税額は、甚だしい虚偽申告により、約二、四〇〇万円の巨額にのぼり極めて悪質である。かかる行為は、国民の納税意識をすこぶる殺ぐもので、社会に与える影響も大きく、一罰他戒の見地から厳しく処断されなければならない。
但し、遺憾ながら、被告人の如き自由業では、必ずしも厳格な自主申告がなされていないことも事実で、被告人のみを責めることはいささか酷な点もあろう。その動機において、不憫な妹の将来や親の扶養等があったことは同情できる。査察後は反省、悔悟して修正申告の上本税を納付している。今後は税理士の指導を受け、納税組合を結成して間違いなきことを誓っている。
そこで被告人に更生の励みとなる量刑を思料した。
よって主文のとおり判決する。
(公判出頭訴訟関係人)
検察官 渡邉惠一
(裁判官 丹羽日出夫)